下手をすると、一番偉くないのが
人類かもしれない。
うちの愛犬、雑種のバルは偉かった。
16年生きて、毎日、僕の帰りを真っ先に
歓迎してくれた。
いつもの散歩道を突然、まっすぐ歩けなく
なり、最後の5日間は僕の部屋で静かに
枯れて逝った。食べも飲みもしないで。
文句ひとつも言わず、黙って僕の目を
見つめながら。
太陽も月も、草木もメダカも。
山も海も。毎日、もくもくと、照らし、
緑をいきいきとさせ、実を成らせ、
すいすいと泳ぐ。何も要求しない。
天変地異も、大自然にとっては、
なんの感傷もない必然。
人間以外の生物は、感謝もしないが、
排気ガスや放射性物質も出さない。
水も汚さない、必要以上の殺生はしない。
誰も泣かない。貧しいからと馬鹿にしない。
ひたすらに生きるだけだ。
人間は何も偉くない、という単純なこの
真実に気づいた者は、もう少し、自分以外の
存在に、感謝と謙虚さを尊敬の念を払えるのでは
ないか。平和や地球環境保護を大声で叫ぶより、
日々の暮らしの中で、身近な小さなことで、
こういうことを自らが行動することの方が
むしろ、大きなことを実現できるのではないかな、
と思う。